【青森県近代文学の名品】

Vol.9 今 官一
ノート「長門配乗記」

昭和31年、『壁の花』により青森県で初めて直木賞を受賞した今官一は、明治42年弘前市に生まれた。昭和19年4月、34歳で応召され横須賀海兵団に入団。同年7月、軍艦「長門」に配乗されレイテ沖海戦に参戦、九死に一生を得て帰還した。このときの体験が『幻花行』『不沈〈戦艦長門〉』に記されている。

『幻花行』は昭和24年6月文潮社から出版された小説集で、戦後間もなく発表された「幻花行T 柔仏寺」「幻花行U 続柔仏寺」「幻花行V 『柔仏寺後記』」をまとめたものである。太平洋戦争末期に一等水兵として戦艦長門に乗った小説家の〈私〉が上陸したマレーシアの熱帯林でした不思議な体験と、乗艦中反古紙の中から偶然見つけた軍医の体験記、帰還してそれらを小説として発表した〈私〉の後日談を、戦艦長門の艦内生活の様子とともに綴った作品である。 


ノート「長門配乗記」

 「長門配乗記」は、戦艦長門に乗船した今官一が半分に切断したノートを上着のポケットにたたみ込み、【遺書】を書くつもりで手探りの見聞を書き留めたものであり、克明な描写により軍艦での生活やレイテ沖海戦の緊迫した状況を伝える貴重な資料である。「長門配乗記」から『幻花行』『不沈〈戦艦長門〉』などがうまれた。現在は青森県近代文学館常設展示室において、戦艦長門への哀しい鎮魂歌である『幻花行』や『不沈〈戦艦長門〉』、創作ノートとともに展示されている。


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