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青森市の版画家、山口晴温氏(1926-2008)が、去る4月13日にお亡くなりになった。
1946(昭和21)年、日本童画会員となり、佐藤米太郎・米次郎兄弟の「青い森社」で子ども雑誌「むつの子」の編集を担当。著名作家の原稿を読み、挿絵を描いたことがきっかけとなり、児童文学の仕事に深く関わってゆく。新美南吉『ランプと胡弓ひき』、鈴木喜代春『十三湖のばば』『けがづの子』をはじめ、多くの児童文学作品の表紙絵・挿絵を描いた。とりわけ、青森県児童文学研究会(児文研)初代会長・北彰介との名コンビにより、『童戯の古典』『オモチャコ』『青森県むかしむかし絵本』、平成元年に小学校三学年の国語教科書に採択された「せかいいちのはなし」など、多くの作品を生み出し、児文研の活動の中心を担った。
『こぞっこまだだが』は、『青森県むかしむかし絵本』シリーズの第一集として、1972(昭和47)年に刊行された。旅に出た「こぞっこ」が、鬼ばばに追いかけられて、三枚のお守り札に助けられる…全国に流布する「三枚のおふだ」の津軽版の再話であるこのお話は、児文研の初期の活動の頃から子どもたちに大人気で、紙芝居やスライドでも親しまれてきた。2001(平成13)年には新世研から再刊、英語・ポルトガル語・スペイン語版も出版、外国にも紹介された。ゆったりとしてリズミカルな津軽弁の語り口に加えて、墨一色なのにほのぼのとした温かさを感じさせる、味わいのある「こぞっこ」や鬼ばばの絵が、このお話の大きな魅力となっている。
2005(平成17)年に当館で開催した「北彰介・山口晴温展」では、北・山口両氏が直筆で文と絵を描いた大型紙芝居「こぞっこまだだが」が展示された。初期の頃から子どもたちへの読み聞かせに使われてきたもので、何度もめくられて破れたところをガムテープで補強してあり、見た目にはみすぼらしいが、このお話がいかに多くの子どもたちに語り継がれてきたかが一目でわかる感動的なものだった。期間中、「むがしっこはじまるよ」と題した子ども向けのイベントで、山口氏がこの大型紙芝居を使って実際に「こぞっこまだだが」のお話を語ってくださった。温かくてユーモラスで、ひょうひょうとしたその語り口に、子どもたちが笑ったりこわがったりしながら、じっと聴き入っていた様子が忘れられない。
「挿絵の仕事は文学の黒子役」と語り、童画の制作にいつも誠実に向き合い、人との出会いを大切にしていらっしゃった方だった。たくさんの表紙絵や挿絵には、その人柄がそのままにじみ出ている。もう新しいお話が聞けないことが本当に寂しいけれど、その温かい童画に彩られた物語は、これからの子どもたちにも語りつがれてゆくことだろう。
(主幹・佐々木朋子)
(平成20年5月8日付・毎日新聞「今週のお宝」掲載)
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