【青森県近代文学の名品】

Vol.3 三浦哲郎  草稿「忍ぶ川」


※このページは、青森県の広報「メルマガあおもり」掲載の文学館の連載と連動しています。ここでは「メルマガあおもり」には掲載されない資料写真を掲載しています。
 三浦哲郎は、昭和6年3月16日青森県八戸市に生まれた。満6歳の誕生日から次姉、長兄、長姉と次々に兄姉を自殺や失踪で失い、自らの〈血〉に思い悩む。八戸高校から早稲田大学に進学するが、援助を受けていた次兄の失踪により一時帰郷、地元で教鞭をとる。そんな中、旧友・船越泰昌と再会、太宰治の『晩年』を借りた三浦哲郎は、太宰治「葉」から〈死のうと思っているひと〉の繊細な心情を知る。やがて、自滅していった兄姉に代わって発言、鎮魂したいと〈文学〉を志し、早稲田大学文学部仏文学科に再入学した。

「志乃をつれて深川へいった」

「忍ぶ川」は、4人の兄姉が次々に自殺・失踪するという暗い血の宿命を負った東北出身の私大生〈私〉と、料亭「忍ぶ川」に働く薄幸の女性〈志乃〉が、ひたむきな愛によってささやかな幸せをつかむまでを、清冽で抒情的な筆致で描いた作品である。
 この作品は昭和36年第44回芥川龍之介賞を受賞した。小説で身を立てようと模索し、一時〈都落ち〉を余儀なくされながら、作家としての再起を期した苦しい生活のなか、睡眠時間を切り詰めて書き上げた作品である。
 この草稿は、青森県近代文学館・常設展示室に展示している。

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