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【青森県近代文学の名品】

Vol.37 桜庭芳露 詩稿「豫感」(福士幸次郎による添削原稿)


桜庭芳露詩稿「豫感」 朱筆は福士幸次郎による添削。『落葉する頃』所収。 パストラル第六詩集『落葉する頃』
大正10年12月・パストラル詩社刊
装画・松山邦太郎


大正八年、青森県で最初の詩の結社「パストラル詩社」が弘前で結成された。

後藤健次の呼びかけにより、一戸玲太郎(謙三)、桜庭芳露、天内浪史らの同人が集結。既に東京で活躍していた先輩詩人・福士幸次郎に添削指導を仰ぎ、詩作に励んだ。結社名は一戸の発案により、「牧歌」の意の「パストラル詩社」とし、同年九月に第一詩集『田園の秋』を刊行、以後大正十二年までに全七冊の詩集と三冊の雑誌を刊行した。福士は毎回懇切な添削によって彼らの熱意に応え、激励した。

「パストラルは誇るに足る詩社です。所謂田山花袋氏も東北屈指の床(ゆか)しい都会と賞賛されたる都会を中心として、諸君はその床しさをどこまでも端れない感情のもとに、素朴な田園的詩歌の芽を、そこで育ててゐられるのである。」(福士幸次郎「序」・第六詩集『落葉する頃』)

当時、同人の桜庭芳露(1894-1948、弘前生まれ)が福士から添削指導を受けた詩稿が残されている。桜庭はパストラル詩社の中心的詩人で、途中から後藤に代わり詩社の経営にあたった。のちに上京し白鳥省吾主宰の詩誌「地上楽園」に参加、その名を認められた。「豫感」は、パストラル詩社第六詩集『落葉する頃』に発表された詩である。

「白昼(まひる)、/青空のもとではたらいてゐる人を見るのはつらい。/あゝ沈んでゐたいと願つたのに、/ちらつく幻は濃くなつて、/あかるうなったわたしの眼に、/もう疑う余地もなく/ほゝゑみ溶けるふくらんだ蕾が出てくる。」

福士は、時には二昼夜を費やすこともあったというほど熱心に添削指導にあたった。詩稿「豫感」にも朱筆で多くの書き込みが施されている。語句の用い方、漢字を平仮名に開く箇所等、細かく指摘し、最後に詩の内容に対し「或る恣態の心境を捉へたのはいい。だが観照は不透徹である。感じ得るものはもつとある筈だ」と評価している。

未熟ながらも素朴で誠実なパストラルの詩人たちの作品のすべてを福士は歓迎し、個々の長所を認めながら、妥協せず真剣勝負で対峙した。後輩詩人に対する福士幸次郎の指導の実際が、この詩稿に示されている。

(主幹・佐々木朋子)

(平成19年12月13日付・毎日新聞「今週のお宝」掲載)