【青森県近代文学の名品】

Vol.28   佐野ぬい 「北畠八穂児童文学全集表紙絵原画」
1974年、グァッシュ・紙、26.9x19.3cm

 佐野ぬい(1932−)は今年の4月から女子美術大学の学長をつとめている。出身は弘前で、同大学を卒業後、現在に至るまで母校で教鞭を執ってきた。ここ数年、大規模な個展が開催されている。2003年に第26回損保ジャパン東郷青児美術館大賞を受賞し、翌年同美術館でその受賞記念展を開催、05年青森県立郷土館で回顧展を開催、同年東奥賞を受賞した。翌06年弘前市の百石町展示館でその受賞記念展を開催した。画風は青を基調とした都会的な、深い詩情を湛えた抽象風景である。69年以来新制作協会の会員でもある。
 文学館のコレクションといえば、原稿や書籍類が主たるものだが、それはもともと展示を想定していないので、一般的には展示映えするものではない。また色紙や短冊といった伝統的形式もあるが、お座敷芸の域を脱するものが少なく、これもまた展示すると陳腐になりがちである。文学館の展示をより一層魅力あるものにするためには、良し悪しは別として、今や作家にまつわる絵画やオブジェ、映像といった、展示に花を添えるものが求められる時代である。
 さてこの意味で、佐野ぬいの表紙絵の原画は文学館の貴重なコレクションといえる。画面は青を基調とし、黄と緑、白と黒を配して、いかにも佐野ぬいらしい詩的な作品となっている。また児童文学ということを考えてか、画面の中心に少女と少年のプロフィルを配して、使途から来る要請を満たしている。実際の表紙とこの原画を比較すると、原画の方がどことなく間延びして感じられるが、これも画面に文字が配されることを想定して描いた結果なのだろう。
 今もなお旺盛な好奇心と若々しい感性を持って世界を見つめている様子が、お会いするたびに感じられる作家である。

(館長・黒岩恭介)

(平成19年10月11日付・毎日新聞「今週のお宝」掲載)

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原画

北畠八穂児童文学全集第1巻(全6巻 講談社 1974-75)