| Vol.19 福士幸次郎 詩碑拓本「胸にひそむ火の叫びを雪降らさう」
弘前公園三の丸にひっそりと立つ文学碑。松林に囲まれた玄い石碑に触れると、ヒューと音を立てて一陣の風が吹きすぎた。碑文「胸にひそむ火の叫びを雪降らさう」(福士幸次郎の詩「鵠(くぐひ)」の一節)がはっきりと見えた―
弘前市出身の詩人福士幸次郎(1889〜1946)は、大正3年に詩集『太陽の子』を刊行して口語自由詩を開拓、萩原朔太郎をして「『太陽の子』の暗示なしに、僕の『月に吠える』は無かった」と言わしめた。また、高木恭造の津軽方言詩集『まるめろ』が、福士の助言によって生まれたことも世に知られている。
晩年、福士は郷里の岩木山に葬られることを望み、友に次のように語ったという。「わが古里は寒冷の地で時々ひどい冷害がある。僕は死んでもそこの貧しい百姓たちを激励しつゞけたいのだよ。それには岩木山の頂上がいゝ。あすこは津軽平野が一望に収まるから。あのてっぺんに寝てゐて眼をさましたら起きあがり、平野を見まはす。泣きべそをかきさうな顔で、痩せ穂を苅ってゐる百姓がもし一人でもゐたら、〈けっぱれ〉と叫んでやりたいのだ」(佐藤一英「『けっぱれ』―詩人の一語―」)
残念ながらその希望は叶わず、福士は東京江東区の雙樹寺に眠っている。しかし、没後10年を経た昭和32年、有志らによって岩木山をのぞむ郷里弘前に建立されたのが冒頭に記した文学碑である。「胸にひそむ火の叫びを雪降らさう」―詩人福士幸次郎の熱い思いが伝わってくる。
(室長・櫛引洋一)
(平成19年7月2日付・毎日新聞「今週のお宝」掲載)
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