【青森県近代文学の名品】

Vol.12  長部日出雄 草稿「津軽世去れ節」




※このページは、青森県の広報「メルマガあおもり」掲載の文学館の連載と連動しています。ここでは「メルマガあおもり」には掲載されない資料写真を掲載しています。
 弘前市出身の長部日出雄は、フリーライターを経て、昭和45年、小説に専念するために帰郷した。以来2年4箇月の間津軽を歩きまわりながら綿密な取材を重ね、昭和47年津軽書房より第一創作集『津軽世去れ節』を刊行する。翌48年、第一創作集『津軽世去れ節』所収の「津軽世去れ節」「津軽じょんから節」で第69回直木賞を受賞した。直木賞の受賞は、青森県出身者では今官一に続く2人目であった。
 『津軽世去れ節』は、津軽が舞台の小説6篇を収めた小説集である。表題作「津軽世去れ節」は、伝説的な津軽の歌い手“嘉瀬の桃”が破滅するまでの生涯を描いた作品である。自分が西善蔵・太宰治と連なる津軽の「破滅型」ではないかと感じている物書きの“わたし”が、“嘉瀬の桃”の略歴を知って「桃よ、お前もか…」と思い、〈人々の記憶に残っている断片をつなぎ合わせて、そのあいだの空白の部分を想像してみる〉という形で描かれている。

初版の帯は吉行淳之介が書いた。この帯で吉行は長部を評して〈郷土の風土は、彼の躯にまるごと入りこんでいる。彼は鋭い男だが、それは短刀にも似たものではない。重くて鋭く、斧に備わっているものだ〉とし、〈その特色が十二分に発揮されたとき、私たちは瞠目するに足る作品に会うことになる。〉と結んでいる。

 この草稿「津軽世去れ節」は、現在青森県近代文学館に常設展示している。


 

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